平成22年 秋期 応用情報技術者 午前 問80

A社は、B社に委託して開発したハードウェアに、C社が開発して販売したソフトウェアパッケージを購入して実装し、組込み機器を製造した。
A社はこの機器を自社製品として出荷した。
小売店のD社は、この製品を仕入れて販売した。
ソフトウェアパッケージに含まれていた欠陥が原因で、利用者が損害を受けたとき、製造物責任法(PL法)上の責任を負うのはだれか。
ここで、A社、B社、C社、D社及び損害を受けた利用者はすべて日本国内の法人又は個人とする。

 ア  機器を製造し出荷したA社が責任を負う。
 イ  ソフトウェアを開発し販売したC社が責任を負う。
 ウ  ハードウェアを開発したB社が責任を負う。
 エ  販売したD社が責任を負う。


答え ア


解説

  • 機器を製造し出荷したA社
    機器を製造していますので責任を負います。
  • ハードウェアを開発したB社
    A社の委託により開発を行っているので責任を負いません。
  • ソフトウェアを開発し販売したC社
    ソフトウェアは製造物責任法が対象とする製造物ではないので責任は負いません。
  • 販売したD社
    販売しているだけですので責任は負いません。

※情報処理技術者試験には直接関係ない話を書きます。

[製造物責任法におけるソフトウェアについて]
 ソフトウェアは製造物責任法で対象とする製造物に当たらないため、ソフトウェアのバグで損害を被った場合、製造者(ソフトウェアベンダー)の過失を証明できないと損害賠償が行えません。(プリインストールされたソフトウェアのバグを原因とした損害賠償の裁判も起きていますが、裁判所はソフトウェアがPL法の対象になるかの判断を避け、ソフトウェアの操作ミスガ原因とした判例もあります。)
 近年、SaaSやクラウドコンピューティングといったネットワークを介してサービスを行うシステムが増えていますが、これらのシステムの不具合でビジネスに支障が出た場合もPL法を根拠に損害請求を行うことはできません。また、民法を根拠に争うのは非常に大変です。
 そのため、こういった事態を防ぐためにもSLAを結び、ベンダー側の責任を契約で明確にする必要があります。
 残念ながら、経済産業省からも、産業界からもソフトウェアをPL法の対象するといった動きはありませんので、利用者側で被害を被らないような工夫をしましょう。


キーワード
・製造物責任法

キーワードの解説
  • 製造物責任法(PL法)
    製造物の欠陥により損害が生じた場合の製造業者等の損害賠償責任について定めた法律です。
    民法では製造者の過失を証明できないと損害賠償請求できませんが、製造物責任法では、製造物に欠陥があった場合、製造者の過失の有無にかかわらず製造者に損害賠償を行うことができます。

もっと、「製造物責任法」について調べてみよう。

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