平成22年 春期 ITパスポート 中問C

事業戦略立案に関する次の記述を読んで、問97〜100に答えよ。

健康食品メーカーのS社の企画部では、健康菓子事業の戦略立案を進めており、自社の状況を、SWOT分析での強み、弱み、機会、脅威について分類し、採るべき戦略を検討して二つの方針案を作成した。
S社の状況と方針案の概要は、次のとおりである。

[S社の状況]
(1) 営業拠点数が他社よりも少ない。
(2) 競合するT社の健康菓子事業の撤退が決まっている。
(3) 競合他社よりも高い商品企画力をもっている。
(4) 健康志向の高まりで、健康食品への関心が高まっている。
(5) 工場の老朽化が進んでいる。
(6) 少子化によって子供人口が減少している。
(7) 食品の安全性に対する消費者の目が厳しくなっている。
(8) 顧客の会員化によって顧客情報が集まり、富裕層の会員獲得にも成功している。

[方針案の概要]
方針案1  強みを更に伸ばすために、情報システムを強化する。
方針案2  自社の事業の拡大を図るために、T社が撤退する事業を買収する。
ここ数年の健康菓子の市場シェアは、Q社25%、R社16%、S社12%、T社10%、その他37%である。

[ストラテジ]
 問97  [S社の状況]を次のようなマトリックスで整理する。
[S社の状況]の(1)と(2)を図のa〜dに分類するとき、適切な組合せはどれか。
有利な面 不利な面
内部環境 a b
外部環境 c d

(1)を入れる場所 (2)を入れる場所
b c
b d
d c
d d

[ストラテジ]
 問98  [S社の状況]の中で、強みに分類されるものとして、適切な組合せはどれか。
 ア  (1)と(5)  イ  (2)と(4)  ウ  (3)と(8)  エ  (6)と(7)

[ストラテジ]
 問99  方針案1に沿って、強みを更に伸ばすための方策に関する記述として、適切なものはどれか。
 ア  営業拠点数の影響を受けにくいインターネットによる通信販売システムを導入する。
 イ  顧客の購買データを分析して、会員にきめの細かいサービスを提供するために、CRMシステムを構築する。
 ウ  商品の生産工程における安全管理を徹底するために、生産管理システムの刷新を図る。
 エ  成人向け健康菓子の規格に際して、各地域の人口分布に関する統計データを分析することを目的として、POSシステムを導入する。

[ストラテジ]
 問100  方針案2を進めた場合、[S社の状況]の(1)と(5)に対処することができ、T社が占めていた市場シェアをほぼ確保できる見込みである。
市場シェアに基づいて次のような戦略を採った場合、買収後のS社の戦略に関する記述として、適切なものはどれか。
市場シェア 採る戦略
市場シェアが1位の企業 市場全体の規模拡大
市場シェアが2位の企業 自社の強みで他社を攻撃
市場シェアが3位以下だが、特定商品の市場シェアは1位の企業 特定ニーズへの適応
上記以外 模倣によるコストの節約

 ア  Q社の人気商品に類似した健康菓子を商品化し、Q社よりも低価格で販売する。
 イ  アレルギーに配慮した健康菓子の生産に特化して、高価格、高収益を目指す。
 ウ  広告などによって人々の健康志向を高め、健康菓子の需要そのものを増やす。
 エ  商品企画に関連する部門に資金を投入して、競争力の高い優れた商品を企画し、販売する。


答え 問97 ア 問98 ウ 問99 イ 問100 エ


解説

 問97  [S社の状況]から
(1) 営業拠点数が他社よりも少ない。
(2) 競合するT社の健康菓子事業の撤退が決まっている。
であり、(1)は営業拠点が少ないことで広範囲での営業活動が難しいという、S社の内部の問題である。(b)
(2)は競合他社が事業撤退することで競争相手が減るという、外部の有利な面である。(c)
 問98  [S社の状況]からS社の強みと考えられるのは
(3) 競合他社よりも高い商品企画力をもっている。
(8) 顧客の会員化によって顧客情報が集まり、富裕層の会員獲得にも成功している。
である。
(1)(5)はS社の弱み、(2)(4)は外部環境の有利な面、(6)(7)が外部環境の不利な面に分類できる。
 問99  [S社の状況]からS社の強みは
(3) 競合他社よりも高い商品企画力をもっている。
(8) 顧客の会員化によって顧客情報が集まり、富裕層の会員獲得にも成功している。
であり、これに沿った情報システムの強化としては、会員となった顧客に対しきめ細かい対応をするための
 イ  顧客の購買データを分析して、会員にきめの細かいサービスを提供するために、CRMシステムを構築する。
になる。
 問100  T社の事業を買収することで、S社の市場シェアは
 12% + 10% = 22%
になり、市場シェアとしてはQ社に次いで第2位になる。
したがって、採るべき戦略は“自社の強みで他社を攻撃”であり、S社の強みは
(3) 競合他社よりも高い商品企画力をもっている。
(8) 顧客の会員化によって顧客情報が集まり、富裕層の会員獲得にも成功している。
なので、この強みを生かした戦略は
 エ  商品企画に関連する部門に資金を投入して、競争力の高い優れた商品を企画し、販売する。
になる。


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