平成23年 秋期 ITパスポート 中問C

売上向上プロジェクトに関する次の記述を読んで、問97〜100に答えよ。

S社は服飾販売会社で、数十の店舗をチェーン展開している。
近年、競合他社と比べると売上額の伸びが鈍化しているので、売上向上プロジェクトを立ち上げた。
販売企画課の入社2年目のAさんは、先輩社員のBさんとともに、このメンバーに選ばれた。
売上向上プロジェクトでは、各店舗に任せている販売促進活動(以下、販促活動という)の効果を高める必要があると考え、各店舗の現状を調査し、課題や要望を抽出することにした。
調査にはアンケート調査とインタビュー調査があるが、今回の調査ではインタビュー調査を行うことにした。
Aさんは、Bさんからインタビュー調査の注意点の説明を受けて、各店舗の店長にインタビュー調査を行い、複数の店舗に共通している課題と要望をまとめた。

[インタビュー調査の注意点]
 (1)  販促活動の実態や問題点を、短い時間で効率よく調査をするために、あらかじめ主要な質問項目を準備しておくこと
 (2)  質問の順序として、一般的な質問から具体的な質問に展開したり、対象とする活動の時間的な流れに沿って質問を展開したりするなど、論理的な流れで行うこと
 (3)  調査を実施する側と調査を受ける側で、認識のずれが生じないようにすること

[店舗の課題と要望]
 (1)  アルバイト社員や新入社員は商品知識が乏しい。
このことから、それらの社員を雇用している店舗では、商品知識や流行のファッション情報の習得を目的とした教育を実施したいという要望がある。
 (2)  顧客の満足度を向上させることで売上を増やし、店舗ごとに定められている売上目標を達成したいと考えている。
 (3)  顧客から受けた商品情報に関する質問に店員が適切に回答したり、顧客の好みに沿った商品を推薦したりする必要があると考えている。

AさんはBさんの指導の下で、店舗の課題と要望に対する施策を考え、実現性を考慮した上で、売上向上プロジェクトの計画書(以下、プロジェクト計画書という)を作成することにした。
また、複数の施策が考えられるときには、それぞれの予測効果を数値化して比較し、施策実行の可否の判断を行うことにした。

[ストラテジ]
 問97  売上向上プロジェクトが、今回の手法として、アンケート調査ではなくインタビュー調査を選択した理由として、適切なものはどれか。
 ア  各店長に対する質問項目を、統一することができるから。
 イ  各店舗の実態に合わせて、柔軟に質問を変えることができるから。
 ウ  短時間で、費用を掛けずに一斉に調査できるから。
 エ  調査を行う人の主観に左右されない質問ができるから。

[ストラテジ]
 問98  [インタビュー調査の注意点]に従ったインタビュー調査の進め方として、適切なものはどれか。
 ア  商品の仕入れや返品、陳列、販促、売上集計など、店舗で実施する全ての業務について質問する。
 イ  店長がインタビュー調査の目的から外れた回答を続けても、店長の主体性を重んじてインタビュー調査を継続する。
 ウ  店長から得た回答のメモを取り、インタビュー調査終了後、メモの内容に誤解がないかを店長に確認する。
 エ  店舗ごとに、売上の良い商品に関する項目に絞って質問する。

[ストラテジ]
 問99  Aさんは、[店舗の課題と要望]に関する施策をプロジェクト計画書にまとめるとき、それぞれの要望に因果関係があると考え、プロジェクト計画書ではそれらの因果関係を順序付けたシナリオとして記述することにした。
プロジェクト計画書に(1)〜(3)を記述するとき、記述順として、適切なものはどれか。
なお、(a) → (b)という記述は、(a)を解決することによって(b)の解決が促進されるという因果関係を表している。
 ア  (1) → (2) → (3)
 イ  (1) → (3) → (2)
 ウ  (2) → (3) → (1)
 エ  (3) → (1) → (2)

[ストラテジ]
 問100  Aさんは、会員顧客を対象にした販促活動を行うことを検討している。
そこで、表1に示す四つの販売促進策を考え、それぞれの費用と効果の金額を見込んだ。
効果に関しては、期待できる効果が大の場合、中の場合、小の場合に分け、それぞれの場合が発生する確率を0.2、0.5、0.3と推測した。
この推測に従って実施すると予想利益が最大になる販売促進策はどれか。
ここで、予想利益は効果の金額の期待値から費用を差し引いたものとする。
表1 販売促進策の費用と効果の金額
単位 百万円
販売促進費 費用 効果の金額
商品発表会兼商談会への招待 7 15 12 6
ダイレクトメール 6 15 10 5
電子メール 3 10 8 5
電話 5 12 10 5

 ア  商品発表会兼商談会への招待  イ  ダイレクトメール
 ウ  電子メール  エ  電話


答え 問97 イ 問98 ウ 問99 イ 問100 ウ


解説

 問97  店舗の売上高の推移や、店舗ごとに行っている販促活動の内容によって、適宜、質問内容を変えることでより効率的な情報収集(現状把握)を行うためにはインタビュー法が適しています。
アンケートは質問者の主観が入りにくい、統一的な情報収集で利用します。
 問98  インタビューの場合、会話の中で質問者と回答者の認識の違いが発生することがあるので、インタビューの最後に、質問者が取ったメモの内容を、双方で確認する必要があります。
 問99  [店舗の課題と要望]を見ると、売上を増やすためには顧客満足度を向上させる必要があり(2)、そのためには、顧客の好みに沿った商品を推薦する必要があり(3)、そのためには、社員の商品知識や流行のファッション情報の習得が必要である(1)ので、これを整理すると(1)が解決すると(3)が促進され、(3)が解決すると(2)が促進されるので、これは(1) → (3) → (2)(イ)である。
 問100  効果の予想は1“効果の金額×効果の発生する確率”の総和から費用を引けばいいのでになるので
 ア  商品発表会兼商談会への招待は、15百万円×0.2 + 12百万円×0.5 + 6百万円×0.3 - 7百万円 = 3.8百万円になる。
 イ  ダイレクトメールは、15百万円×0.2 + 10百万円×0.5 + 5百万円×0.3 - 6百万円 = 3.5百万円になる。
 ウ  電子メールは、10百万円×0.2 + 8百万円×0.5 + 5百万円×0.3 - 3百万円 = 4.5百万円になる。
 エ  電話は、12百万円×0.2 + 10百万円×0.5 + 5百万円×0.3 - 5百万円 = 3.5百万円になる。
したがって、最も予想利益が大きいのは電子メール(ウ)である。


戻る 一覧へ