H25 技術士(情報工学)ソフトウェア工学 II-2-1:ステークホルダー


(1)開発ソフトウェアとステークホルダー
開発するソフトウェアは従来のサーバー・クライアントで動作していたものの、クラウドサービスへの変更である。従来のソフトウェアは顧客内部にサーバを設置し、そこに顧客毎のカスタマイズを行ったソフトウェアを稼動させ、サービスを提供していたが、新しいソフトウェアはWeb技術を用いてサービスセンターでソフトウェアを動作させ、利用者ごとに選択した機能を組み合わせたサービスの提供になる。
このソフトウェアのステークホルダーには、まずサービスを利用する顧客ユーザーがいて、関心事はサービスの内容と費用である。また、社内には顧客ユーザーに対してソフトウェアの運用や保守を行っているサービスエンジニアがいて、関心事は新ソフトウェアになったときの保守の仕組みである。さらに、新ソフトウェアの開発を指示した経営者がいて、関心事は新ソフトウェアの開発コストと、新コストで得られる利益である。さらに、新ソフトウェアの開発を行うソフトウェア技術者がステークホルダーで、関心事は新ソフトウェアで採用するクラウドシステムの実現方法である。

(2)ステークホルダーの関心事の分析
各ステークホルダーの関心事の中で重要なのは、新ソフトウェアのサービスの内容である。従来のサーバー・クライアントからクラウドサービスということが決まっているが詳細については具体的な技術課題もはっきりしていないので、要求されたサービスの内容をクラウドシステムを使ってどう実現するかが問題になる。
この課題への取り組みはまず、要件定義の段階で機能要件だけでなく、非機能要件についても目標を具体的な数値で出し、あいまいさをなくすことを考えた。
そのために、各ステークホルダーを集めて要件の洗い出しを行ったり、要件の内容によっては個々のステークホルダーにインタビューを行い、要件の定義を行った。

(3)関心事の確認方法
定義された要件は多岐にわたり、複雑なものだったのでこれを関係する要件をまとめながらドキュメントにし、各ステークホルダーに説明を行う。次に、新ソフトウェアの開発の仕様書、設計書のレビュー時に要件を満たす内容になっているか確認を行うためのチェックリストを作成し、レビュー時にそれを記録し保管する。
また、開発チームとは別のメンバーが、要件の内容に合わせてテスト項目を作成して、開発チームのテスト完了後に、要件定義との整合性を目的とした実機検証を行い、要件が実現されていることを確認し、この結果を各ステークホルダーに説明し承認を得てから新ソフトウェアでのサービスの提供を開始する。
このように、ソフトウェアの開発工程の各所で要件を満足しているかを確認しながら進めることで、要件を満たしたソフトウェアの開発が行える。


[Intermission]
この問題は考え方が問題文とは逆で、ソフトウェアの開発で留意する内容から、それについて関係するステークホルダーを探し、ステークホルダー毎の関心事を決めていくという進め方をしないと書いている途中で論理が破綻しますね。
この解答の進め方はこの問題に限らないのかもしれませんが…。



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