H26 技術士(情報工学)ソフトウェア工学 III-2:サードパーティーの作成したソフトウェアの再利用


(1)課題(技術面、組織面、知財面)
サードパーティーが作成したソフトウェアは、ソースコードのみまたは仕様書があるだけでソフトウェアの詳細な設計書がないことが多い。設計書のないソースコードを再利用すると、詳細な動作がわからないため十分な検証が行えない、そのため設計書をリバースエンジニアリングで作成する必要があるが、リバースエンジニアリングを行うには担当者の技術力が高くないと難しい。
この再利用のために技術力のある者を担当させるのは組織面にも影響を与える。通常、再利用は簡単な確認で行えると考え、再利用する箇所には高い技術力を持った者を割当てることを予定しないので、この再利用箇所のリバースエンジニアリング作業のために技術力の高い者の配置はプロジェクトの人的リソースの課題になる。
また、サードパーティー製のソフトウェアに限らず、外部から導入したソースコードの再利用では著作権の問題がある。著作権法上、ソースコードの著作権は作成したサードパーティーに帰属していて、導入した側は使用権は持っていても著作権がなく、不具合対応やプラットフォームの移行などでの必要最小限の変更は認められるが、再利用についてはできないことが多い。

(2)対応策
詳細な設計書がないことへの対応策としては、まずサードパーティーに設計書の提出を依頼する。多くの場合、委託元には提出していないがサードパーティー内部で設計書を作成していることもあるため、依頼することで設計書を入手できることは多い。また、委託時の条件で開発時に作成した文書をすべて納入するような契約とすることも大事である。
サードパーティーから設計書が入手できなかった場合、リバースエンジニアリングで設計書を作成することになるが、この作業を自社の要員で行うと技術力の高い者が必要になるため、この対応策としてはソフトウェアを作成したサードパーティーと別途契約し設計書の作成を委託する方法が良い。元々の契約に設計書の納入がなかった場合、想定外のコストになってしまうが、自社の作業への影響を考えると、このコストは不可欠なものである。
サードパーティー製のソフトウェアを再利用するときの著作権の問題については、まず元々の委託時の契約内容を確認し著作権がどちらに帰属するか調べる、サードパーティーに帰属する場合には、まず再利用することに問題がないか確認する。問題ないという回答であればこの問題は解決であるし、問題がある場合には前述の問題と同じように費用が発生するが著作権の買い取りなど再利用できるような契約を結ぶ必要がある。

(3)リスク
前述のようにサードパーティーが作成したソフトウェアを再利用するときのリスクは、計画にない費用が発生することである。
作成されていない設計書を作成するための費用や著作権を買い取る費用が発生し、プロジェクトの費用が超過してしまい、納期、品質は満足するものであってもコスト超過による失敗プロジェクトになってしまう。
費用の超過が認められず、自社技術者により設計書の作成を行うことになった場合のリスクは技術力の高い者をこの作業に割当てるために他の作業の担当者が技術的な課題を持つことになり、品質面、スケジュール面のリスクが高くなってしまう。これに対して技術力の高い者に無理をさせサポート業務も担当させると、この者への負荷が高くなりすぎプロジェクトとして問題が発生してしまい、最悪の場合には高い技術力を持った担当者の不満が高くなり離職してしまうなどリスクがある。


[Intermission]
ソフトウェアを外部委託するときは請負なので著作権の扱いには注意が必要です。
後々、流用することができなかったということがないように、契約内容は専門家(法務部門)にチェックしてもらいましょう。
これは、発注側だけでなく受注側でも同じで、契約内容の確認など専門的知識が必要なものほど外部(専門家)の力を利用するべきです。



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