平成25年 秋期 ITパスポート 中問D

図書館システムに関する次の記述を読んで、四つの問いに答えよ。

A図書館では、バーコードを用いた図書館システムを用いて、書籍の貸出と返却業務を行っている。

[書籍の貸出と返却業務]
(1)  貸出担当は、バーコードリーダーで利用者力一ドの利用者番号と書籍ごとに割り振られた識別番号を読み取り、貸出情報を登録する。
(2)  返却担当は、バーコードリーダーで書籍の識別番号を読み取り、返却情報を書き込む。

現在、利用者の利便性向上と業務の効率向上を目的として、現行の図書館システムにおけるバーコードをRFID(Radio Frequency Identification)に変更したシステム(以下、新システムという)の導入を検討している。
表1に図書館システムで用いるバーコードとRFIDの特徴の対比を示す。

表1 図書館システムで用いるバーコードとRFIDの特徴の対比
バーコード RFID
読取距離 数cm〜数十cm 数cm〜数十cm
読取枚数 一度に1枚 一度に複数枚
読取情報量 一度に十数文字 一度に数百〜数千文字
読取方式 工学的な読取り 電波を用いた読取り

司書のBさんは、利用者や司書から出されている要望事項を、新システムで実現できるかどうか検討することにした。

[要望事項]
(1)  利用者カードの利用者番号及び書籍の識別番号をバーコードリーダーで個々に読み取っているので、貸出業務が集中する時間帯には、利用者が貸出しのカウンタに並んでしまう。
貸出担当は、作業を手早く処理したい。
(2)  書籍棚から取り出した書籍を、利用者が元の棚に戻さないことがある。
定期的に、棚と書籍をチェックしながら整理するが、この作業の時間を短くしたい。
(3)  返却担当は貸出予約されている書籍が返却されれば取り置きし、予約をした利用者に電話で連絡をする。
何度電話しても連絡が取れないことがあるので、連絡の手間を軽減したい。
(4)  書籍の返却は、図書館の入口にある返却ポストでも受け付けている。
返却業務が滞ると、図書館システム上で書籍が貸出中になっている時間が増加する。
利用者の利便性向上のために、返却ポストに入っている書籍を把握したい。

[ストラテジ]
 問97  Bさんは、RFIDを内蔵した利用者カードを発行し、書籍にはシート状に加工したRFIDを貼り、RFID読取装置をカウンタに設置し、貸出、返却時に利用することを検討した。
これで改善できる[要望事項]として、適切なものはどれか。
 ア  (1)  イ  (2)  ウ  (3)  エ  (4)

[マネジメント]
 問98  A図書館には数十万冊の蔵書があり、新システムに移行するためには、シート状に加工したRFIDを全ての書籍に貼る必要がある。
移行期間中は、現在書籍に貼ってあるバーコードと新たに導入するRFIDを併用し、業務を止めずに新システムにスムーズに移行するため、貸出履歴を管理するためのファイル(テーブル)は現在のシステムのものをそのまま利用する方法を考えた。
次の記述中のa、bに入れる字句の適切な組合せはどれか。

Bさんは、新システムにスムーズに移行する方法を実施するために、書籍の識別番号と、利用者カードの利用者番号について、次のようにすることにした。

書籍の管理番号:   a  
利用者カードの利用者番号:  b  
a b
現行のものを利用する 現行のものを利用する
現行のものを利用する 新たな番号に置き換える
新たな番号に置き換える 現行のものを利用する
新たな番号に置き換える 新たな番号に置き換える

[ストラテジ]
 問99  Bさんは[要望事項]を実現するために、市販されているRFIDを用いたシステムを調べ、次の施策を考えた。
 @  RFIDを内蔵した利用者カードを発行し、書籍にはシート状に加工したRFIDを貼り、貸出、返却時にカウンタで用いるRFID読取装置を新たに導入する。
 A  全ての書籍棚の棚板にRFID読取装置を設置し、書籍と書籍棚をチェックするシステムを導入する。
 B  返却ポストにRFID読取装置を設置する。
Bさんは、施策@〜Bによる効果を整理した結果、これらの施策では実現できない要望事項があることに気づいた。
[要望事項]のうち、実現できない事項に該当するものとして、適切なものはどれか。
 ア  (1)  イ  (2)  ウ  (3)  エ  (4)

[ストラテジ]
 問100  A図書館では、書籍の他に雑誌も閲覧に供している。
ただし、貸出しは行っていない。
雑誌を購入する予算は限られているので、Bさんは、利用者によく読まれている雑誌を優先的に購入したいと考えている。
そこで、新システムで導入を検討しているRFIDを使ってデータを取得し、そのデータを利用することで雑誌の入替え時の参考にできないかを調査した。
雑誌は、雑誌を載せる棚をもつラック(以下、雑誌ラックという)に置かれている。
RFIDを用いた市販システムを調べた結果、雑誌にシート状に加工したRFIDを貼り、棚の一つ一つにRFID読取装置を設置することで、棚から取り出した時刻、棚に戻した時刻を記録できることが分かった。
この仕組みを用いて取得したデータから得ることのできる情報として、適切なものはどれか。
 ア  雑誌ごとに、雑誌ラックの棚から取り出された回数と取り出されていた時間を取得できる。
 イ  雑誌ごとに、雑誌ラックの棚から取り出された回数と取り出されていた平均時間を、利用者の年代ごとに取得できる。
 ウ  雑誌ごとに、雑誌ラックの棚から取り出された回数を、曜日ごと、利用者の性別ごとに取得できる。
 エ  同一人物がある雑誌を複数回取り出した場合の重複を排除し、雑誌ごとに、雑誌ラックの棚から取り出した人数を取得できる。


答え 問97 ア 問98 ア 問99 ウ 問100 ア


解説

 問97  バーコードからRFIDにすることで一度に複数枚のデータを読取ることが可能になるため、読取り時間を短縮することが期待できます。 したがって、改善できることとしては(1)(ア)になります。
 問98  貸出履歴を管理するためのファイル(テーブル)は現在のシステムのものをそのまま利用するため、書籍の識別番号、利用者カードの利用者番号も現行のものを利用する必要があります。
 問99  RFIDを利用したシステムに変更すると書籍の管理作業は改善できるが、利用者との連絡作業の改善はできないため、改善できない事項は(3)(ウ)になります。
(電話ではなくメールで連絡をするようにするなどの改善が必要です。)
 問100  雑誌をラックから取り出すとき、利用者の情報を確認する手段がないため、取得できる情報は雑誌についての情報に身になります。


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